▲北部地震前の社屋

仙台から北東へ40km、米どころとして有名な大崎平野の最東部に位置する美里町は、鳴瀬川の左岸に沿って弓形に位置し、町の総面積の76%を水田が占めています。 「日本一おいしい米ササニシキ」の里として全国的に有名な当地は、鳴瀬川と江合川に挟まれた清流によって潤され、肥よくで豊かな自然に恵まれています。

治水技術が進んでいなかった頃は、豪雨のたびに鳴瀬川、江合川が氾濫し、町民一丸となって自然のもたらす悪条件と闘いながら過酷な自然条件のなかで、より付加価値の高い農作物の栽培や農産加工品の開発に力を注いできました。現在では手作りハムや和牛(仙台牛の産地)、バラの栽培やこがね餅など和菓子など多くの地場産業へ立派に育ちました。

蔵推奨銘柄

川敬商店の沿革

 明治35年創業。
昔ながらの伝統「山廃仕込」を今に伝承する県内でも数少ない蔵元です。代表銘柄黄金澤の名前は、湧谷藩主伊達家の御用商人(金物商)をしていた初代川名家の創業の地が日本で最初の金の産地で、万葉歌人、大伴家持の歌にも詠まれ、遠く奈良時代の大仏の鍍金用として献上したこで有名な遠田郡涌谷町にある黄金山神社の傍らの澤の近くだったことから「黄金澤」と命名いたしました。明治35年、川名敬治が、大崎一の穀倉地帯南郷町に自作田を求めて移転してから酒造業を始めました。現在の生産高は700石、特定名称酒と普通酒の割合が4対6と普通酒の方が若干多く、普通酒では地元での圧倒的なシュアを占めております。生産量の5割が地元遠田郡を中心とした松島、塩釜などで消費されており、特定名称酒を中心に仙台や首都圏へも出荷しております。
黄金澤大吟醸
平成8年、9年、12年、13年全国鑑評会金賞受賞
特に平成12年度は見事3冠達成しました。
全国鑑評会金賞受賞・東北新酒鑑評会吟醸酒受賞・南部杜氏自醸清酒鑑評会優等賞受賞。
今まで全国鑑評会では、金賞の他銀賞も6回連続受賞しています。

川名正直社長の山廃にこだわる理由は?!

川名社長の仕事は、秋口には米の手配から造りの準備、そして冬には本番の酒造り、春からは毎日の酒の管理まで、加えて毎日の営業計画から大口顧客への営業活動、愛用のパソコンを駆使しての酒パンレットの作成までこなすオールマイティーな社長です。特に酒造りについては理論家として宮城の蔵元の間でも知られ、特に利き酒の確かさは県内でも随一と云われています。今まで何度か取材にお伺いし、親しみのある優しいお人柄に古里に帰ったようなリラックスした蔵の雰囲気の中で開口一番酒造りについて特に山廃造りについてお尋ねすると「酒はちゃんと作れば自然にいい酒に仕上がります。けっして難しいことではないんですよ。いま巷で流行している山廃について、造りが難しいとか、香りにクセのあるとか云われていますが、要所々をちゃんと作っていればいい香りがでますし、クセのないおいしい酒が出来上がるのです。昔からの伝統的な製法としての山廃造りは酒造りの原点です。山廃(生もと系)と速醸の一番の違いについては、酒が出来たばかりでは味の違いはほとんどありませんが、夏を越して熟成してからは大きく差がでます、よく秋上がりと云われるように山廃仕込みの酒は夏を過ぎて秋を迎えるころには味がのって喉ごしがよくなります。その違いは歴然としています。」特に川名社長が気を付けている造りについて一押し、お尋ねすると「大切な事は2点あります。1つは米の水切り、あと1つは麹造りですね。酒の成分は80%が水ですから水には特別なこだわりがあります。例えば酒母を作る時には酵母を育成するための栄養を与えるためアルカリ土類金属(カルシューム、マグネシューム、カリウムなど)の多く含んだ硬水で仕込みます。そのために長年の研究から見つけだした最適な山の水、鹿島台伏流水(硬度20゜以上)を使っています。その後のもろみの本仕込みの時には、キレイな酒質に仕上げるためアルカリ土類金属の少ない鳴瀬伏流水(超軟水で硬度1゜)で仕込みます。そのように工程によって使う水も違います。」淡麗辛口の風潮のなか、あくまで「旨み・こく」そして「あきのこない酒」にこだわり、社長自らが酒造りにたずさわり、お客様に喜ばれる酒を提供することが蔵元の喜びと日々研鑚している蔵元の姿勢には、ただ々感心させられました。全国鑑評会金賞連続受賞の秘訣は、川名社長のたゆまぬ研鑽の賜と実感いたしました。

山廃仕込みについて

酒造りにおいて、健全かつ順調にアルコール発酵を行わせるためには、無数の純粋な清酒酵母と酒造りの初期に雑菌の繁殖を抑える多量の乳酸が必要です。その目的のため酒母が造られます。酒母は乳酸を得る手段によって生もと系酒母と速醸系酒母があり、ほとんどの蔵(95%以上)では醸造用乳酸を添加することによって7日から10日間で製造でき操作も簡単なことから速醸系酒母を使っています。一方川敬商店では、天然の乳酸菌を約20日間かけ自然増殖に導くことによって必要な乳酸を生成させる生もと系酒母に酵母を培養し1ヶ月以上かけて酵母を育成します。その生もとの製造段階で行われる「*山卸」する工程(もと摺り)を省いた酒母を使って行う伝統的な醸造法です。特長としては酵母が健全に強く育っているので、もろみにいってもゆっくりと発酵し、アミノ酸の生成も多いため、生もと特有の香りと、味わいのある濃醇なお酒になります。
*山卸・・・・江戸時代初期の生もと造りでは、蒸米と麹、水を半切桶に仕込んでから最初は手で混ぜて、とろりとなってから櫂で混ぜ、3人1組になって1日3回に区切り20日間ほど続けて櫂で混ぜてからもと桶に入れていました。それが江戸末期には櫂を混ぜる操作が短縮され2日間で櫂入れ作業を終える「山卸」の方法になりました。その時3人のリズムを合わせ同時に作業時間を計るため「もと摺り唄」を歌いながら作業をしていました。

小さい蔵だからこそ、みんなで知恵を出しあい、手間を惜しまず楽しく酒造りをしています。

超特大の釜

▲酒米を蒸したり、火入れの時に使う超特大の釜

吟醸酒用の仕込みタンク

▲吟醸酒用の仕込みタンク

酵母貯蔵庫

▲貯蔵タンク群

酒造りはここから始まります)

▲酒造りはここから始まります。50年前から使用している孵卵器(酵母を培養する器械)

川敬の宝としている貯蔵タンク

▲酒造りについてはついつい熱弁になってしまう川名社長(酵母を説明中)

川名社長

▲川敬の宝としている貯蔵タンク(全国金賞は全てこのタンクから)

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